Bitter Sweet

ときめきたいったらありゃしねえ

よっちゃんのお話

 
 
首の長い女の子って好きだ。
更に首元が少し緩い服着てて鎖骨が出ていたりすれば尚且つ好きだ。

 

 
 
こんにちは。
台風の影響が少しずつこちら東北にも出てきています。電車止まんないといいなぁ。
 
 
 
首が長い女性がね、男性にはグッとくるものがあると。
今図書館にいてレポート作成に勤しんでいるわけですが、前に座ってパソコンをいじっている俯きがちな女性を見て再確認。
 
 
でも…
うーん。
なんかひっかかる。
 
 
 
 
あ、
 
少しだけ引っかかる理由を思い出したので、僕が幼少の頃に体験した出来事を話してみたい。
 
私の住んでいる町はいわゆる田舎で、地域のお店はファミリーマートしかありません。お昼になるとファミリーマートがライブ前の武道館みたいになるほどに人が我先にと狂喜乱舞で食べたい品物を掻っ攫いにきます。
 
コンビニ、学校、家、しかない僕の住んでいる地域には、他に一つだけリハビリセンターなる建物があります。そのため、障がいを持った方や高齢者の方が沢山います。
 
そして、僕が幼稚園の年長さんか、小学校に入ってすぐの時その出来事は起こりました。
 
ある日の昼下がり、自分の家から少しだけ離れたところにあるめぐちゃんの家に歩いて遊びにいきました。背の小さい女の子の幼馴染です。
 
最初はめぐちゃんの家でお菓子を食べたりゲームで遊んだりしていたのですが、それもだんだん飽きてきて日もそろそろ暮れる頃に、補助輪のついた自転車を引っ張って練習をしに行くことになりました。
 
めぐちゃんのお母さんも「まぁ近くだったらいいよ」と言ってくれたので残りのお菓子を大急ぎで口に詰めて席を立ちました。でも次の瞬間めぐちゃんのお母さんはこんな言葉を発しました
 
「あ、今日よっちゃんいるかも」

 

そのよっちゃんというフレーズを聞いた時に一瞬怯んだめぐちゃんの顔を僕は見逃しませんでした。

「え?よっちゃん?何それ?人?友達?」と僕は2人に問い掛けました。

そしたらめぐちゃんは食い気味で「いや、なんでもない。」明らかになんでもなくない顔で僕の言葉を遮ってきました。食い気味で。

 
小さいながらに危機回避能力を発揮した僕は本当に大丈夫なのか?ていうか誰?ということを主にめぐちゃんのお母さんの方に必死に問い掛けました。
 
ですが頑ななめぐちゃん。断固として行く姿勢を崩しません。こんなめぐちゃん見たことない。めぐちゃんのお母さんも苦虫を噛んだような顔をして「ま、まぁ今日いないかもしれないし、会ったらすぐ帰ってきなさい」とのこと。
 
 
"会ったらすぐ帰ってきなさい??"
 
 
僕の脳の中の危険シグナルがファンファンいいながら行くことを止めようとしている。
 
だけど僕の意見なんかそっちのけでめぐちゃんは僕の手と自転車を引っ張って近所の坂に連れて行きました。
 
鬼が出るか蛇が出るか。そんな気持ちで自転車を坂の上に向かって必死にこいでは降りてまた登っては降りてを繰り返していました。
 
でも15分くらいたっても何も誰も現れずいつもの風景しか流れてきません。めぐちゃんも
「今日はいないみたい!よかったぁ〜」と。
 
いやいや、いなくてよかった様な人物なのかよどんなんだよ。
 
まぁいないならいいか、今日もブルーアイズスーパー号(自転車)で風を切って走ってやるぜ!
と僕が安堵、決心したその時。隣にいるめぐちゃんが暫く声を発していないことに気づきました。ふと隣を見てみるとめぐちゃんが僕の後ろ側を見て口をパクパクさせて声にならない声を発していることに気づきました。
 
そのめぐちゃんを見たときに僕は一瞬で全てを悟りました。
 
 
よっちゃんだ
 
 
とはいえ僕はよっちゃんの姿を知らない。近所の少し怖いおっちゃんとかかもしれない。そんなんだったら初対面の僕にはそんなに怒鳴ったりはしてこないだろう。
 
そんな思考が頭を駆け巡り、なんなら少し勝ち気で僕は後ろを振り返りました。
 
すると、
身長が170後半
目がつり上がっており
四肢が異様に長く
肌が真っ白か少し青白くてどこかゴム質のよう
色のはげて丈の足りないジーンズを腰よりだいぶ上で履き
白いところが既に黄色くなっているような赤と白のボーダーのTシャツを着て
焦点の合わない目でこちらを見つめている人がいました。(恐らく女性であるが不明)
 

殺られる。

僕はそう思いました。
冗談じゃなく本気で。
 
手を伸ばせばすぐに捕まえられる距離でなんかブツブツうわ言を喋っている。
 
めぐちゃんは悲鳴を上げて見たこともないスピードで坂を下り自宅に逃げました。1人で。
 
僕は逃げようとしていたのですが、何を思ったか坂の上に向かって自転車のペダルを漕ぎまくり、結構なスピードで漕いでいたつもりだったけれど全然進まずによっちゃんは依然として異様に近い距離のままです。
 
泣きながらめぐちゃーんと叫び必死でペダルを漕いでいるとよっちゃんの発しているうわ言が聞き取れました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ばかあほぼけばかあほぼけばかあほぼけばかあほぼけばかあほぼけばかあほぼけ(エンドレスリピート)

 
 
 
もうだめだ。
 
 
そこでやっと僕は自転車の向きを変えて坂を下り、よっちゃんを振り切ってブレーキを掛けることなくめぐちゃんの家へ逃げ込みました。
 
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら帰宅して、顔を拭きもせずめぐちゃんのお母さんに泣きつきました。女の子にかっこ悪いところを見せたくないとかはもう何処かに吹っ飛んでいました。
 
めぐちゃんは先に逃げた安堵感からか案外けろっとしていて、今思うとあの時ボコボコにしても文句は言われなかっただろうなと思います。
 
21年生きてきた中でも私の人生で一番怖い思いをした出来事で、一番トラウマになっています。
 
 
大きくなってからわかったのですが、彼女(彼?)はそのリハビリセンターに通っている方だったみたいです。
子どもが好きで一緒に遊びたかったのかなぁ。泣き叫んで逃げて悪かったなぁと今になって少し後悔。
 
 
僕も恐らくめぐちゃんも、今となってはよっちゃんが急に現れても怖くも何ともない歳になりました。でもあれからよっちゃんを見かけたことは1度もありません。無意識的に見ないようにしていたのかな。まだ近所に住んでるのかな。どっかに引っ越したのかな。近所の子どもと仲良くしていることを願うばかりです。
 
 
大学生になって福祉の勉強をしているのはその体験もほんの少し関係してるのかもしれないですね。
 
 
 
 
 
 
 
 
こんなことをふと思い出した。
そうだ。テスト勉強しなきゃ。