Bitter Sweet

ときめきたいったらありゃしねえ

カリーパンって言う輩は信用出来ない




男ならば、いや、人間ならばいい格好したいっていう感情が何処かしらに有ると思う。世の中皆ガンジーの様に全てを悟った人達ばかりではないのだから。だが、もしかするとガンジーでさえも体裁を気にしてそれっぽい名言を残していったのかもしれない。言い過ぎた。甚だ無礼だ。


今、農家として生計を立てている祖父の兄が朝の畑仕事を終え我が家にお茶を飲みに来た。
祖父の兄は「さと爺」と我が一家に呼ばれ、髪が真っ白。腰は僕の爺よりは曲がっていないけれど、足が少し悪い。いつも傘を杖代わりに着いている。田舎の年寄りには珍しく、あまり気難しい性格ではない。絶望的につまらない冗談と朗らかな笑顔で周囲を癒すキャラクターである。一つだけ欠点があるとすると、同じ地域に住んでいる僕ですら何を言ってるか9割方聴き取れない程訛りがきついところかな。それは冗談もつまらなく聴こえる訳だ。成る程。


そんなさと爺は、つい最近まで入院していて僕と暫く会っていなかった。玄関でつまづいて転んで骨を折ったらしい。
漸く治って再開を果たしたのだが、変わり様に唖然とした。
1人でトラクターを運転して稲を狩ったり、さくらんぼや苺をビニールハウスで育てていたあの鉄人が、少し入院して会わなかっただけで顔面に折り目をつけたように深い皺が縦横に刻まれ、足も5センチと地面から上げずに歩き、声の張りも気持ち弱くなった様である。ぱっと見た感じ、正にガンジーだ。いつか社会科の教科書で見たあのガンジーの顔そっくりである。


僕はなんだか怖くなった。
たかだか1ヶ月程度会わなかっただけで人はこんなにも変わるのか。
怪我が治って良かったという気持ちよりも奇妙な違和感と畏怖を感じる方が先だった。

さと爺は随分歳もいっている。僕に比べたら残りの人生は恐らく短いだろう。それなのにほんの少し「入院」という人生ルートに進んだだけでこんなにもショートカットしてしまうのか。



今後なるべく寄り道して、道草食べて、ひと休みしながらゴールして行って欲しいと願いながら彼の発するよくわからない言語に相槌を打っていこうと心に誓おう。

















一見、慈愛に充ち満ちた様なガンジーのあの表情は、実は世の全てを悟って絶望すらを通り越した虚無の表情なのかもしれない。














































♪爆裂パニエさん/tricot