Bitter Sweet

ときめきたいったらありゃしねえ

足元の黄色いステッチを頼りに




ジムとプールの往復をすることによって温度差で体調も気分も上下する。
かれこれ誰もいないプールの監視台に30分程座っているのだが僕は一体何を監視しているのだろう。

生温い水の張ったこの空間に有線から流れるaikoのはつらつとした歌声が小突く様に反射する。




こうやって無意識的にも、意図的にもなるべく波立たない様に生活をしているせいか、僕は焦る事と、恥ずかしい思いをする事が本当に嫌いである。本当に。
恐らく他人の何十倍もいや、何百倍も過敏に感受してしまう。



焦りというものは視界を一気に狭める。
今迄であれば首を振ると上、下、横、後ろ、前を向いていても大体真横の物くらいは見えていた。だが、焦りの匂いを少しでも嗅ぎ取ると、もしくは気配を感知するだけでも目の前しか見えなくなる。奥すら見えない。その事に気付く余裕もない。もがかざるを得ないが、もがけばもがく程その輪廻に嵌ったり宜しくない方向へと進む。


恥ずかしい思いというのも毛嫌いしている。
誰しもが嫌だろうが、僕の嫌悪感は他人のそれとは恐らく種類が違う。
「嫌」というか「無理」と言った方が近いだろうか。
自分が得た羞恥を周囲の笑いに変える力も自信も皆無であるし
恥を指摘される程他人に自分の内側に干渉して来られるのも畏れ多く、少々不快である。



それは僕だってスクールカーストやら生活集団の中で第一線に立つ様な人間若しくはキャラクターを演じれる様な人間になりたかった。
迫り来るモノを避け続けて、当たってしまった友人を後手的に庇う能力に長けたって自己嫌悪に陥るだけだ。


しかし、もう20年程もそういった気性で項垂れながら日々を流していると、無理矢理にでも環境に順応する。
くそみたいなフリをかまされたり、揚げ足を取ることしか生き甲斐の無い様な奴に絡まれた時は、そういった自分をねじ伏せて蓋をして鍵を掛ける。
そして違う引き出しから「そういった時用」の自分を引き摺り出して、ほら行けと尻を蹴る。

一番深いところに自分がいて
自分でない多様な自分を上から掛けていって、スコップで叩いて固めたら、知らぬ間に自分らしい自分は白骨化していった。驚くほど脆く、触れようとすると塵となり消えた。
もっと掘り進めなければ断定は出来ないだろうが恐らく僕はもう彼に会うことは無いだろう。







贋作のまま、贋流で頑張るしかないのだ。照れも恥も曝け出す事は不可能であるから、せめて必死な自分を悟られない様にしよう。



































ミスターパーフェクト/back number