Bitter Sweet

ときめきたいったらありゃしねえ

シナプスが猛ダッシュ






2014年12月22日午後7時、ロックバンドには珍しく開演時間をそんなに押さずに照明が消え、それは始まった。
白く薄い幕はまだ降りず、後ろの照明から照らされたメンバーの影と掻き鳴らす音が我々の喧騒を遮断するかの様に皆の心臓を殴る。
顔の見えないメンバーの様子を伺いながら耳だけを凝らす。
その時、細美さんの最初の一言、最初の発音を聴いた瞬間に体の内側から泡立つ様な感覚を覚える。
そして幕が開け、いつも通りだが、確かにいつもとどこかが違うメンバーを見て鼻の奥がツーンとした。決して悪い変化ではない。
田舎から急に出てきて現地の人より明らかに厚着、尚且つ周りをやたらに見渡し、挙動不審な動きをしているこんな僕にはあり得ないことだ。今思えば絶対にありえないけれど、彼らが演奏をしている姿を目の当たりにしている時は僕だけに歌っているものだと信じて止まなかった。2階席の端に座って他人の目を気にして上手く手を挙げることも出来ない僕にである。

「武道館になんの思い入れもないけど、この景色好きだわ。ありがとう。」

その一言が聴けただけで僕が今日ここに存在する意義があった。

いつだってそうだ。音楽は、the HIATUSは僕を救ってくれる。
「無理」が目の前に現れても、上手く生きることが出来ていなくても、かっこよく振舞うことなんか出来なくても、いつだって彼らの音楽が僕の常識を薙ぎ倒す。
体の芯に電流が流れ、肌が泡立たなかった曲は一曲もなかった。何度も何度も無意識的に涙が溢れそうになって、息が詰まり、ひたすら自身の五感を研ぎ澄ました。寒気が全身を舐め、腋汗が滴る2時間だった。

決して武道館が似合わない訳ではないが、きっと国旗の下で歌うこの場所がゴールではないだろう。彼の言う通り、また何処かの汚い路地裏の小さなライブハウスでthe HIATUSを見たい。















































♪Ghost In The Rain/the HIATUS