Bitter Sweet

ときめきたいったらありゃしねえ

スウェーしてジョルト




風邪をひいた。






なんて認めない。
片方の鼻腔が完全に塞がり、そのお陰で耳も詰まる。喉の奥も腫れ、必死にうがいをしたところで逆効果な事も薄々二十幾年の経験を元に感じ取っている。瞼もうまく開かないし、脳に牛皮を貼り付けたかの様に思考が滲む。

だが認めない。
こういった個人の尺度で病気かどうか決まる類のものは大体「気のせい」だ。
「風邪」程曖昧なものは無い。「愛」とか「心」と同意義。
風邪の定義など無い。その人が少し寒い時や精神的に滅入った時に気怠さを毛ほどでも感じたのであればそれは風邪だろう。
ただゲームを始めるにしても説明書を読んで操作方法と主人公の意図を汲み取らなければ旅に出ない僕だ。輪郭のぼやけている「風邪」といった文字の羅列に躍らされる程素直な訳では無い。
但し体温計は別だ。数値化されたら元も子もない。まぁ言っても体温の高さが風邪に直接繋がっているといった根拠は何処にも無い訳だが。


とことん斜に構えよう。何に対しても何方にも対応出来るように。
人間の目は180度よりほんの少し広く見える様になっている。前と横だけでなく、少し、ほんの少しだけ過去の廃物や想定外の物に対する反応が出来る為である。恐らく。真正面からばかり捉えていても疲れてしまうし、不意な角度からやってくる黴菌のような物事や奴等に上手く格好をつける事が出来ない。その愚直さこそが羨ましくもあるが。
死角から菌がやって来ても、斜の構えで叩き斬ってやる。逆から来ても鞘で殴打する。



まぁ、なんだかんだ言ってもバイト帰りにローヤルゼリー配合のウイダーとかリポビタンDとか、ヨーグルトとか鼻セレブとか買ってしまっている時点で勝敗は決まっているのだろう。
魔法の言葉「早めのパブロン
苦手な錠剤を3錠も喉の奥に捻じ込んだのだから効いてもらわなければ困る。

明日の朝は雪の匂いで起きることが出来ますように。








































♪星に願いを/GOING STEADY