Bitter Sweet

ときめきたいったらありゃしねえ

亀状態



少しの坂で息があがり、白く変装した二酸化炭素が顔を見せる。
リュックの紐から押し潰された肩が悲鳴をあげる。










先週末、自宅で祖母が転んだ。 文字で書くとこんなにもあっけからんとしているのか。

部屋のドアを開けて、スリッパを履こうとしたところ、つまづいて受身も取れずに転倒した。
結果、幸い骨に異常はみられず、背中と腰の筋肉を痛めただけで済んだのだが、本人は歩くのもなかなか難儀な様だ。




僕には大問題だった。 学校で、高齢者の日常的な怪我は寝たきりに繋がり、痴呆にも繋がる恐れがあると聞いた事があるから。 瞬間的で身体的なケアは拙くも出来るが、慢性的に続く個人的な身体状態と精神的なものに関しては如何しようもない。

まあそうはいえど、先ほど述べた通り口にしたり文字にすれば全く大したことではない。 我々もその「大した事の無い事象」として捉えてこれまで過ごして来たのであるから、世の中の常識の通り、きっと事実もそうなのであろう。
ましてや、僕に出来る様な事であれば、犠牲など厭わない。

実際に身近に起きた場合、日常がほんの少し崩れた場合、しかも被るのが他人の場合、僕は最悪の状態を想像する癖がある。 
こうなるのが嫌だからこうする。 として生きてきた僕は、突発的なトラブルや事案に上手く対応出来ない。 自分では如何しようも出来ない領域に及ぶ問題を前にして、ただただ辟易する事しか出来ない自分の無力さに絶望する。


いつも通り歩けず、何やら苦い顔をしている祖母を見ながら、 可哀想 と 申し訳なさ でいっぱいになる。
頼む、痛くない振りをしてくれ。 出来れば笑ってくれ。
そう思う程に益々自分自身が追い詰められていく。






手も足も出ない僕の顔が、手摺に摑まりながら歩く祖母の背中に透けて見える。 祖母と同じ様な顔をしている。












1週間が経ち、折角良くなってきたと思ったら、今日また、状態を悪化させる事象が起きた。1日目より痛みが酷いようだ。

僕はまだ、上手く歩くことが出来ない。





































































♪二十九、三十/クリープハイプ