Bitter Sweet

ときめきたいったらありゃしねえ

リブは長いほうがいい

 

 

 

 

 

 

起きてからもう20分が経った。

カーテンを開ける気力などなく、布団の中で精一杯足を組んでみたり手を頭の下に入れたりしてみる。

自分は起きてて、その気になればすぐに支度して仕事にでかけられるぞと主張する。

 

誰に

 

一人暮らしなのに

 

頭がおかしくなっている

 

 

なんとか日常に入り込まねばと、

取り敢えずリモコンの赤いボタンを押すも

主電源が切れている。

 

軽く舌打ちをして少しだけ布団を捲り、身体を起こしてみる

まるで初めて感じたような、この世のものとは思えない重力。憂鬱。不快感。毎朝感じている筈なのに。

這い蹲ってやっとの思いでテレビ本体の電源ボタンを押した。

 

 

こんなにも朝早くからばっちりお化粧をして長文の原稿を一言も噛まずに読んでいるアナウンサーを見て、心から尊敬する。彼女らに だるさ なんて概念は存在しないのだ。勿論うんこもしない。

 

綺麗な顔が綺麗な声で連続殺人事件の原稿を読む。日常と非日常がごっちゃになって眩暈がする。 

 

被害者と思われる若い男女の卒業アルバムが表示された。みんな笑顔だ。この時にはこんな事になるなんて一切思わなかっただろうな。

やるせなかったのか、本望だったのかわからない。ただ、最近の彼らは卒業アルバムの顔とはきっと違ったんだろう。

 

首より下だけが映り、奇妙に声が高い彼等の友人は次々と故人の過去を話す。みんないい人だったと。

誰も被害者を悪く言う人はいない。 加害者も 普段は大人しい印象 なんて言われがちだが。

 

あぁ、羨ましい。

わたしも出来れば死んでも周りから評価されるような人間がいい。

 

結果的にあいついいやつだったよね

いなくなってみたらなんか寂しいよね

え?死んだの?ショック。

 

 

もう何年もあっていない、小学校の同級生とか、初恋のあの子は少しばかりでも悼んでくれるだろうか。

 

 

いつ誰がどうなるかわからない

毎日死にたいと思って毎日生きてしまう人もいるし

急に明日、電車に飛び込む人もいる

 

 

 

 

糞みたいな日常の中でどうしようもない自分がテレビの前の彼らのようになれるだろうか

 

 

 

 

目を細めてネクタイをピンで止めた

今日は燃えるゴミの日だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪キルミー/SUNNY CAR WASH