Bitter Sweet

ときめきたいったらありゃしねえ

空棚を埋めつつ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同居人が家から引っ越し、今日から一人暮らしになった。

 

所謂今日から恋人では無くなり、全くの他人としてそれぞれの生活が新しく始まる。

 

彼女と知り合って4年弱、関係が続いたのは2年という。

 

仕事の関係で田舎から上京してきて、右も左も分からない中で、漸く距離が縮まった僕達はお互いの関係に名前を付け、一緒に住み始めた。

 

だもんで、 2年 と言われるとなんだか実感がなく、ただ凄まじい荒波と雑踏の中で当たり前の様に一緒にいたのだなと こんな状況になってから漠然と振り返るばかりだ。

 

ついこの間まで、あからさまに身の丈に合っていないお下がりのママチャリを漕いで練習場に向かっていた気がするが、今月の18日でもう25歳らしい。

 

自分が高校生の時にコーチとしてきていた25歳のOBなんて、ただのおじさんだった。こうして世界は廻っていくんだ。

こめかみが圧迫される。

 

 

結婚なんて言葉も口には出さないが考えていた。なんとなく、彼女の暮らし方を見て、仕草を見て、将来を描いては消してを繰り返した。

 

とにかく平和だった。

相手を想って暮らし、働きを見ながら尊敬し、小さな事に喜びを感じあった。少しばかりの至らなさに愛しさと使命感を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慌しく支度をして、泣きながらハグをされた。

ずっと一緒の家にいたはずなのに、懐かしい匂いがした。

僕はいつから何となくそうならないように生活していたのだろう。

罪悪感と感謝が一気になだれ込んできて、肋の下あたりが痙攣した。

 

何度も何度も、確認する事もないのに何かを確認する仕草を重ねながら大きい荷物を両手に抱えて視界から消える彼女の鼻をすする音がエントランスにこだました。

返事をするように僕も鼻をすすって 一人暮らしの部屋に戻った。

 

思ったより部屋の荷物は減らないもんだな、といつもと変わらないクッションに腰を下ろすと懐かしい匂いがした。

 

後何ヶ月、こんな戸惑いがあるのだろう。

 

冷蔵庫の中には、昨日作ってくれたおかずが。特別なものではない。気取らないいつものおかず。 いつの日か僕の為にと買ってきた賞味期限の切れたヨーグルトも。

 

歯ブラシが1本になった。

コップや茶碗は2つのままだ。

 

 

 

 

 

最近しきりに僕のiPodを聞いていた。

最近再生した項目 に履歴がたくさん残っている。

 

これが作戦だったら巧妙すぎるぞちくしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目と鼻の間に何かが詰まっている。もう暫く詰めたままの方が良い気がする。

 

いつの誕生日か、プレゼントとして買ってもらったヘッドホンから最近再生した項目をシャッフル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスタオルを新調しよう。

とびきりいいやつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪それでも夜は星を連れて/andymori