千鳥足で追い掛けて
2月14日 世はバレンタインデー。
会社で1人3時間程キーボードを叩き、22時30分に帰りの電車に乗った。
京浜東北線に乗って、過去のバナナムーンゴールドを聴きながら帰るのが最近の日課である。軽いため息をついて、いつもの4両目の1番に乗る。
何も変わらず帰路を辿る。勿論甘い香りなど何もしない。今日の昼飯は牛丼であった。
目の前に座るカップルがいやにいちゃつく。目線を合わせる時間が長い。手を絡ませる。不快な猫撫で声が4両目に轟く。
下の中。 いや、言いすぎた。下の上か。
それ程化粧が濃いわけでもなく、身なりが派手なわけでも無い。学生時代はきっと吹奏楽部で図書委員会の副委員長。朝の読書の時間はめっぽうよしもとばななを読み、趣味は家で飼っているネオンテトラの餌やり。
目の前の女の子になんの反動が来たのだろう。
きっと彼女には、5m右にいる酔っ払いの舌打ちは聞こえない。
どろどろに溶けたぬるいチョコが耳に詰まっている。