異臭の強襲
朝はトイレで一定時間過ごさないと不安で外出は出来ないし、朝ごはんで牛乳はまず飲めない。
「東京の学生はもう動いてるよ」
就職活動を目前に控え、不安と期待に揺れる僕達を下目に見ながら、ステージの上で黒服を着た体格の良い男は言う。
東京の学生、とか
企業の目線では、とか
今年は期間が、とか
去年の採用は、とか
不安を煽るワードをこれでもかと言葉に練り込んでくる。
そんなに煽らなくても、自分には自分の出来る範囲でしか出来ない事は僕達だって知っている。
肩幅が広く、もみあげと襟足を刈り上げている何処ぞの中年のおじさんが、鼻息荒く、脂汗を滲ませながら声を荒げている姿は何か滑稽に見えた。
自分のどこを信じたら良いのか。
はたまた自分を信じれば内定を貰えるのか。
こんな「就活生らしさ」は自分にとって何か価値のあるものなのか。
兎に角、自分の胃腸も信じられない奴に、自分の信念を信じられる訳が無い。
先ずは朝食にヨーグルトを食べる所から始めよう。
♪Cakes And Ale And Everlasting Laughs/ELLEGARDEN